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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)1417号 判決 1967年9月29日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人宮岸友吉の上告理由第一点について。

商品取引所法九七条に定める委託手数料は商品仲買人が委託に基づいてなす売買取引に対して委託者から受ける報酬であり、委託証拠金は主として商品仲買人が委託者に対して取得する委託契約上の債権を担保するためのものであるから、商品仲買人が所論のように委託手数料および委託証拠金をその都度徴することなしに商品市場における売買取引をなしたとしても、右商品仲買人と委託者との間の契約およびこれに基づく法律関係の効力に影響を及ぼすものではない。したがつて本件の各取引を有効とした原審の判断に所論の違法はなく、論旨は採用しえない。

同第二点について。

所論のように、商品仲買人が、ある取引についての委託証拠金として委託者から受けた金額を、右委託者の委託による他の取引から生ずる委託者に対する債権の担保に流用、充当することは、商品取引所法九二条が直接にこれを禁ずるものとは解されないから、右流用につき委託者の書面による同意を得なかつた故をもつて本件の各取引委託を無効とする主張は採るをえない。しかして、原判示の事情に徴すれば、本件において被上告人が各委託証拠金を亡藤掛幸太郎のための別種の取引から生ずる債権の担保に流用したことが、同人との間の委託契約の趣旨に反するものとは認められないから、被上告人が右流用により充当計算した結果残る取引上の損金の支払を上告人らに対し請求することは妨げられないものというべきである。したがつて論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

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